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多角化戦略

多角化戦略とは?


キーワード: アンソフの成長ベクトル多角化多角化の類型多角化戦略のタイプ範囲の経済

 企業が持続的に成長するには、プロダクト・ライフサイクル論からも、特定の製品やサービスのみでは成長を持続させることが難しい。従って、新規の製品・サービスの開発や、新規の市場、顧客の開拓が必要であることはいうまでもない。その成長戦略の1つに多角化戦略がある。もちろん、多角化戦略が唯一の成長戦略ではない(下図のアンソフの成長ベクトルを参照)。
多角化戦略:野村総合研究所)








図 アンソフの成長ベクトル

アンソフの成長ベクトル

出所)石井他, 1996, p109, 図5-7
引用元:Ansoff,H. I., "Strategies for Diversification, " Harvard Business Review, Sept.-Oct., 1957.
 企業が市場も製品も変えることなく成長機会を捉えることができるのは、左図の“1”である(市場浸透)。このとき―
①現在の顧客が製品を購入する頻度と量を増大する、②競争相手の顧客を奪う、③現在製品を購入していない人々を顧客として獲得する、などにより成長できる。

既存の製品を新しい市場に導入して売上を伸ばそうとするのが、“2”である(市場開発)。このとき企業は―
①今までの製品を対象としていなかった地域にその製品を導入する、②既存の製品を多少手直しして新しいセグメントに導入する、などにより成長することができる。

“3”の製品開発とは、現在の市場に新製品を導入するもので―①新しい特徴を付け加える、②今までとは異なる品質の製品を創造する、③大きさや色などの異なる追加機種を開発する、などの方法である。

“4”は多角化であり、新製品を市場へ導入、あるいは新製品により新市場を開拓することで、企業の製品・市場スコープを広げることである。

(以上、石井他, 1996, pp109-110より。)


*本ページでは、主に、バーニー(2003邦訳(下):第12章 多角化戦略)、また、石井他(1996) を参照し、多角化戦略について記載する。






多角化とは?
アンソフの成長ベクトル(上図)からは、多角化とは、企業の製品・市場スコープを広げること、あるいは、企業の持つ経営資源を新たな製品・市場へ展開し、さらにはそのようにして既存の経営資源の拡充・発展を図ることであるともいえる(石井他, 1996, p110)。


多角化の類型
  • 関連多角化
    マーケティングおよび流通の特徴や,生産技術,科学的研究活動などが類似した製品・市場への多角化。
    例)3Mは石井(1996)で挙げられている典型的な企業―1902年鉱山会社として設立されたが、その後研磨剤を生産する会社へ(1920年ころまでは単一事業)。研磨剤はベースの上に「接着剤」を「コーティング」し、そこに細かく砕かれた鉱石をつけたこの「接着」と「コーティング」の技術を基盤として多角化した。

  • 非関連多角化
    一般的な管理スキルや財務的資源以外の関連性が希薄な多角化のこと。ほとんどの要素を共有していない。
    例)米国ITT―1920年設立。1960年では全米51位の電話会社で、1968年までに国内52社、海外55社を買収。売上高を22倍にし、全米第13位の多国籍コングロマリットに成長。事業を結びつける共通点は一定の財務水準のみである。

  • 限定多角化
    複数の事業を営む中で、それら各事業のすべて、もしくはそのほとんどが同一業界に属している場合。自社の経営資源やケイパビリティは単一の市場、業界を超えて活用していない。上記の多角化の中でも、最も多角化のレベルは低い。


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多角化戦略のタイプ(石井, 1996, pp113-116)
石井は、その著の中で、ルメルト、吉原他の採用した多角化に関する戦略タイプを紹介している。それぞれは以下である。

(著での引用元:Rumelt, R. P., Strategy, Strucuture and Economic Performance, Harvard Business School, 1974.(鳥羽欽一朗他訳 『多角化戦略と経済効果』 東洋経済新報社, 1977.)、 吉原英樹・佐久間昭光・伊丹敬之・加護野忠男, 『日本企業の多角化戦略』, 日本経済新聞社, 1981.)
  • 専業戦略型(Single)
  • 垂直的統合戦略(Vertical)
  • 本業中心多角化戦略 (Dominant)
    1)集約型(Constrained) 2)拡散型(Linked)
  • 関連分野型多角化戦略(Related)
    1)集約型(Constrained) 2)拡散型(Linked)
  • 非関連型多角化戦略 (Unrelated) 
参考)集約型(constrained):事業分野間の関連が網の目のように緊密にあるもの。少数の経営資源を様々な分野で共通利用するような多角化。拡散型(linked):現在保有する経営資源を土台に新しい分野に進出するが、全体として緊密なつながりをもたない多角化(下の参考図を参照)。

 これらは、順に垂直型から非関連性(またはコングロマリット)へと多角化程度が高くなる表示である。ルメルト、吉原の研究からの示唆は次のとおりである。
  • ○多角化の程度が高い企業の方が、そうでない企業よりも成長性が高い。コングロマリットを除けば、成長性のピークは関連集約型である。
  • ○収益性については、中程度の多角化を行なっている企業が優れている、本業・集約型と関連・集約型は、どちらの研究においても高い収益性を達成していた。

それらを説明する鍵は、「範囲の経済」(=シナジー効果)であり、以下に記載する。






参考)集約型と拡散型のイメージ(石井他, 1996, p114 図5-9より)







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範囲の経済(economies of scope)(バーニー, 2003邦訳(下), p6)
上述のように、関連性の深い事業への多角化は高い収益性をもたらす関係がある。これは、既存の事業との間にシナジー効果があるためだともいわれている。バーニーは「範囲の経済」が存在すると表現している。これは:

2つの事業が統合して運営される場合の価値が、それぞれ別個に運営される場合の価値の合計よりも大きくなるとき、「範囲の経済が存在する」という。経営資源の共有や補完性の結果、2+2=5となるような効果が得られているのである。

結局は、(多角化においては)範囲の経済が存在するかどうかにかかっているのである。




<参考文献>
○ジェイ・B・バーニー, 岡田正大訳, 『企業戦略論【下】全社戦略編 競争優位の構築と持続 』 , ダイヤモンド社 ,2003邦訳, 第12章 多角化戦略より。
○石井淳蔵, 加護野忠男, 奥村昭博, 野中郁次郎, 『経営戦略論 』, 有斐閣, 1996, *多角化に関する主な記載は、第5章 経営資源展開の戦略 3.多角化戦略と経営資源より。






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