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意思決定-個人

個人の意思決定とは?


キーワード: 制約された合理性利用可能性バイアス代表制バイアスアンカリング(係留)と調整

 榊原(2002, p67)によれば、意思決定は組織論の中心概念のひとつであるが、組織論で意思決定という場合、決断の一瞬をいうのではなく―
  1. 決定のための機会を見出し、
  2. 可能な行為の代替案を列挙し
  3. 代替案のなかから選択し、
  4. その結果を評価する
の全過程を指している。

「経営戦略」について体系的な理論を展開したアンソフ*は、意思決定を次のように区別した(石井他, 2002より)。
  1. 戦略的決定(企業と環境との関係を確立する決定(多角化の決定など))
  2. 管理的決定
  3. 業務的決定
* 引用元:Ansoff, H.I., Corporate Strategy, McGraw-Hill, 1965. (H.I.アンゾフ, 広田寿亮訳, 『企業戦略論』, 産業能率大学出版部)
 この3つのなかで、戦略的決定は、①部分的無知のもとでの決定であり、②非反復的(ルーティンでない)で不確実性に富んでいる。このため、アンソフは、戦略的意思決定は効用理論に代表されるような合理的な意思決定の方法では対処できないと主張している。

以下、個人の意思決定を改善することに主眼を置き、制約された合理性バイアスについて記載する。

関連)集団の意思決定










制約された合理性(金井他, 2004, p16参照)
意思決定の科学として絶大な影響力をもってきた経済学では、伝統的に、あらゆる選択肢についての完全な情報に基づいて、利潤を最大化する合理的意思決定のあり方が支配的であった。これに対し、サイモンとマーチの意思決定論では、必要な情報が不足していたり、情報を処理する能力が不完全であったりして、合理的な意思決定ができないとする「制約された合理性」モデルを提唱した。

従って、組織のなかでの意思決定のあり方は、すべての可能性のなかから最適解を求めるのではなく、与えられた選択肢のなかで最大満足の方法を選ぶという現実的な行動となる(最適化原理ではなく満足化原理)。
(関連用語:「効用(Wikipedia)」)



結局のところ、不確実性が高い戦略的意思決定においては、ヒューリスティクスを使用しているのである。
ヒューリスティクス(Wikipedia):心理学では、ヒューリスティックは、人が、複雑な問題解決等のために何らかの意思決定を行う際に、暗黙のうちに用いている簡便な解法や法則のことを指す。)



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記憶情報による罠(印南, 1997、Wikipedia【ヒューリスティクス】参照)
①利用可能性バイアス
②代表制バイアス
③アンカリング(係留)と調整


①利用可能性バイアス
想起しやすい事柄や事項を優先して評価しやすい意思決定プロセスのことをいう。思い出しやすい事例が大きな影響をあたえる。
想起容易性
―衝撃的なもの:事故(飛行機など)、地震
例)災害の発生確率の過大評価。
―情報が入りやすいもの:典型的には報道。
例)殺人や癌などの発生確率を過大評価してしまうなど。

具体性
―特に個人的な経験など、統計的データよりも具体的な事象は、鮮明に記憶され、容易に想起される。
例)喫煙者と非喫煙者の病歴の統計データよりは、肺の写真の方が効果的。

②代表制バイアス
特定のカテゴリーに典型的と思われる事項の確率を過大に評価しやすい、少数の事例から仮説をたてる意思決定プロセスをいう。
例)○○人ならこう考えるなど。

③アンカリング(係留)と調整
最初に与えられた情報や自分が持っている情報を基準点とし、それに調整を加えることで判断していく意思決定プロセスをいう。 調整には限界があり、最初にアンカリングしたポイントに引きずられる。
例1)来年度の売上予測:今年の売り上げや昨年の売り上げを手がかりに調整。
例2)希望小売価格:消費者をいったん小売価格にアンカリングして、安く感じるようにしている。
このほか、アンカリング(係留)は交渉でよく見られる。



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<参考文献>
○榊原清則, 『経営学入門 上 日経文庫 853 』, 日経文庫, 2002, Ⅱ組織行動論―ミクロ組織論, p67.
○石井淳蔵, 加護野忠男, 奥村昭博, 野中郁次郎, 『経営戦略論 』, 有斐閣, 2002, 第1章 経営戦略とは何か,参照。
○金井壽宏, 髙橋潔,『組織行動の考え方―ひとを活かし組織力を高める9つのキーコンセプト (一橋ビジネスレビューブックス)』, 東洋経済新報社, 2004.
*マーチ、サイモンの引用元:March, James G., and Herbert A. Simon (1958) Organizations. New York, NY :Wiley(J. G. マーチ, H. A. サイモン, 土屋守章訳, 『オーガニゼーションズ (1977年)』, ダイヤモンド社, 1977.)
○印南一路,『すぐれた意思決定―判断と選択の心理学 』, 中央公論社, 1997.






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