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資源アプローチ

リソース・ベースド・ビューとは?


キーワード: 戦略グループ戦略の各スクール資源アプローチ分析マヒ症候群コア・コンピタンス

 戦略論、またはそのマネジメントにおける研究で、企業の競争優位がいかに持続するのか―この課題へのアプローチにリソース・ベースド・ビュー(RBV;Resource-Based view)があり、1980年代後半より隆盛している。これは、企業ごとに異質で、複製に多額の費用がかかるリソース(経営資源)に着目したものである。代表的には、バーニー、ワーナーフェルト、プラハラッド&ハメルなどで、資源アプローチの主な枠組みは、リソース・ベースド・ビュー、コア・コンピタンスVRIOフレームワークなどである。


 このアプローチは、ポジショニング・アプローチと論じられることが多いが、ポジショニング・アプローチの代表的な概念、枠組みは、ファイブフォースモデル、戦略グループ*などであり、相互補完的な関係である。

*戦略グループ
業界内部の構造を分析するうえで、業界内の企業を戦略次元上での特徴によってグループ化したもの(ポーター, 1995邦訳新訂版, p183)。

参考)
戦略の各スクールの見解(ミンツバーグ他, 1999邦訳)
デザイン・スクール コンセプト構想プロセスとしての戦略形成
プランニング・スクール 形式的策定プロセスとしての戦略形成
ポジショニング・スクール 分析プロセスとしての戦略形成
アントレプレナー・スクール ビジョン創造プロセスとしての戦略形成
コグニティブ・スクール 認知プロセスとしての戦略形成
ラーニング・スクール 創発的学習プロセスとしての戦略形成
パワー・スクール 交渉プロセスとしての戦略形成
カルチャー・スクール 集合的プロセスとしての戦略形成
エンバイロメント・スクール 環境への反応プロセスとしての戦略形成
コンフィギュレーション・スクール 変革プロセスとしての戦略形成







資源アプローチ

背景
1980年代頃より、競争戦略として発展してきたポジショニング・アプローチの「同じ戦略グループ内の収益の差が説明できない」という限界が論じられるようになってきた(リソース・ベースド・ビューの議論へ)。また、SBU(戦略事業単位)をPPM(ポートフォリオ・アプローチ)でマネジメントする方法は短期的なキャッシュのマネジメントにはよいが、長期的な成長の側面から問題が論じられ、分析型戦略論(PPM(ポートフォリオ・アプローチ)など)への批判は、コア・コンピタンスの議論へ発展していった。


分析型戦略の反省
資源配分の戦略であるPPMなどにより、環境の機会や脅威に組織の資源を適合させるために、組織のあらゆるレベルの目的、構造、管理システムを統合的・分析的にマネジメントするという分析的戦略論が、戦略論の中心となっていたが、こういったことは、戦略策定担当の本社スタッフへの集権化、官僚化(制度化された手続きに追われる)により、現場の環境適応能力の低下を招いた(分析マヒ症候群;paralysis by analysis syndrome)。

こういった原因は、既存の資源をいかに配分するかの問題に関心がかたより,自社にとって重要な経営資源が何であり、それをどう獲得・蓄積するかという問題への関心がおろそかになったことにある。(以上, 石井他, 2002を参考に記載)


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参考)
コア・コンピタンス(ここでは、特に石井他, 2002, pp209-216を参考にしている)
企業組織の競争力、想像力の源泉としての基盤となる能力をコンピタンスという。特に、競争優位の源泉として、ハメル、プラハラッドは技術、スキルをコア・コンピタンスとした。特に、ティッド他(2004邦訳)は、ハメル、プラハラッド(1990)*を引用し、「優位性の真の源泉は、企業内の幅広い技術と生産能力を統合し、個別のビジネスを変わりゆく事業機会へとすばやく対応させていくマネジメント能力に見出される」と、彼らの考えのまとめを著している。

この概念は、ある特許など限定的なものでなく、シャープの液晶技術など技術、スキルを束ねたものである。具体的には、多角化企業において、大きな木で例えられる。根がコア・コンピタンスであり、幹、大きな枝(コア製品)、葉、果実(最終製品)に必要な養分を補給し、安定をもたらす。シャープにおいて、液晶技術がコア・コンピタンスであるとすれば、液晶モジュール製品がコア製品、古くは電卓、液晶テレビ、液晶携帯が最終製品である。

*Prahalad, C. K. and G. Hamel (1990) 'The core competencies of the corporation', Harvard Business Review, May-June, 79-91; Prahalad, C. K. and G. Hamel (1994) Competing for the Future. Harvard Business School Press, Cambridge, Mass. (一條和生訳 , 『コア・コンピタンス経営―大競争時代を勝ち抜く戦略 』, 日本経済新聞社, 1995.)

上記のコンピタンスの束という考えは、戦略的ビジネス・ユニット(SBU)の集合体という見方だけではなく、個別のユニットには必ずしも納まりきらないコンピタンスの束という見方も必要である、ということである(下表)。


表 企業に関する2つの見方:戦略的ビジネス・ユニット(SBU)とコア・コンピタンス
(ティッド他, 2004邦訳, p148 表5.3より引用。引用元は、上のハメル、プラハラッド(1990))

戦略的ビジネス・ユニット コア・コンピタンス
競争の基盤 現在の製品の競争力 コンピタンスを形成するための企業間の競争
企業の構造 関連する製品市場における事業ポートフォリオ コンピタンスとコア製品と事業のポートフォリオ
ビジネス・ユニットの立場 自立、すなわちSBUが予算だけでなく、すべての経営資源を保有する。 SBUはコア・コンピタンスの潜在的な宝庫である。
資源配分 SBUが評価の単位となる。資本がSBUに配分される。 SBUとコンピタンスが評価の単位である。経営トップが、資本と人材を配分する。
経営トップによる付加価値 SBU間のトレードオフにより利益を最大化する。 戦略のアーキテクチャを明確に体系化し、将来のコンピタンスを形成する。



コア・コンピタンスの議論からPPM、SBUの問題点
○PPM分析にもとづいて撤退させるSBUの中に、将来重要な役割を果たす技術が含まれている場合、それを失ってしまう(たとえ、PPMで“負け犬”であっても)。
○PPMからは新たな成長の機会となる事業は見えてこない。

こういった能力ベースの経営では、コンピタンス構築による競争が展開される(SBUでは最終製品ベース)が、ハメル、プラハラッドは、
どのようなコア・コンピタンスを構築すべきか、また、それを構成する技術はどのようなものかのコンピタンス構築のための最終目標を組み込んだ「戦略設計図(strategic architecture)」を開発することが重要であると述べている。


コア・コンピタンス議論の限界
○コンピタンスの概念とその操作化があいまいである。
○どちらかというと技術や生産技能に焦点がある。ケイパビリティーの議論はマーケティングなども含む企業のビジネスプロセス全体に焦点をあてている。
○技術や生産技能への焦点は環境への変化というダイナミズムに対しての対応が弱い。
(特定の技術は激変する環境の下では一瞬のうちにその強みを喪失することがある)






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<参考文献>
○M.E. ポーター, 土岐坤・服部照夫・中辻万治訳 ,『競争の戦略』,ダイヤモンド社; 新訂版版, 1995邦訳.
○ジェイ・B・バーニー, 岡田正大訳, 『企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続』ダイヤモンド社 ,2003邦訳.
○ヘンリー ミンツバーグ, ジョセフ ランペル, ブルース アルストランド, 斎藤嘉則・奥朋美・木村充・ 山口あけも訳, 『戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック (Best solution) 』, 東洋経済新報社, 1999邦訳.
○石井淳蔵, 加護野忠男, 奥村昭博, 野中郁次郎, 『経営戦略論 』, 有斐閣, 2002, 第8章 経営戦略のパラダイム 参照。
○ジョー ティッド, キース パビット, ジョン ベサント,後藤晃・鈴木潤, 『イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント』, NTT出版, 2004邦訳, 第Ⅱ部 第5章 経路:技術軌道を利用する 参照。







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