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企業の強みと弱みの分析

バリューチェーン、VRIO分析


キーワード: 経営資源経営資源の異質性経営資源の固着性バリューチェーン(価値連鎖)分析VRIOフレームワーク

 企業の強みと弱みを分析するモデルを構築するため、マネジャーのスキル、組織リーダー、経済レント、そして企業成長といった要素をすべて統合した考え方が発展している。一般に、リソース・ベースド・ビュー(resource-based view of the firm;経営資源に基づく企業観)と呼ばれるこのフレームワークは、企業ごとに異質で、複製に多額の費用がかかるリソース(経営資源)に着目する。このような資源を獲得することで、企業は競争優位が獲得できると考える。


リソース・ベースド・ビューの基本的前提
経営資源の異質性
企業は生産資源の集合体(束)であり、個別企業ごとにそれらの生産資源は異なっている。
経営資源の固着性
経営資源のなかにはその複製コストが非常に大きかったり、その供給が非弾力的なものがある。

 また、この議論では、広範囲の企業属性が経営資源として認知できる。ここで経営資源とは、企業のコントロール下にあって、企業の効率と効果を改善するような戦略を構想したり実行したりすることを可能にするものである(ケイパビリティ、コンピタンス、組織内のプロセス、企業の特性、情報、ナレッジなど)。

経営資源の企業属性は
  ①財務資本:金銭的資源
  ②物的資本:物理的技術,設備,立地,原材料へのアクセス等
  ③人的資本:従業員が保有する経験,判断,知性,洞察力,人間関係
  ④組織資本:組織構造,公式,非公式の計画,管理,調整のシステム,外部の他企業などとの関係等
である。

*バーニーの著では、経営資源、ケイパビリティは同義語として、コア・コンピタンスという語は、多角化戦略の概念化や実行に関する議論にのみ使用する、としている。


どのようにして、競争優位となる経営資源やケイパビリティーを特定するか。
本ページでは、企業内部を分析するモデルとして―
  ○バリューチェーン(価値連鎖)分析
  ○VRIOフレームワーク
について記載する。

以上の記載は、バーニー, 2003邦訳, 第5章 企業の強みと弱み:リソース・ベースド・ビューを参照、引用している。
以降、それぞれの分析についてもバーニー, 2003邦訳を基に記載する。






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バリューチェーン(value chain;価値連鎖)分析
企業にとって競争優位を生じさせる可能性がある経営資源やケイパビリティを特定する方法の1つは、バリューチェーン分析を行なうことである。これは、コスト優位や差別化という競争優位の源泉を特定するツールで、企業の主な活動を細分化することで、自社の事業活動のどこに強み、弱みがあるのかを分析し、現在の戦略の有効性や改善すべき点を考えることができる。


この分析に関しては―
垂直的に連鎖する事業活動の総体」(バーニー, 2003邦訳, p246)
コストのビヘイビアおよび差別化の現存または潜在の源泉を理解するために会社を戦略的に重要な活動に分解する」(ポーター, 1985邦訳, p45)
とされている。

以下には、バリューチェーン―ポーターのモデルを示す。
(ポーター, 1985邦訳, p49, 図価値連鎖の基本形より)

ポーターのバリューチェーン

価値創出活動を主活動と支援活動に分類している。主活動には、購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービスがあり、支援活動は、全般管理、人事・労務管理、技術開発、調達活動である。

同一業界における会社は、似たようなチェーンを持つとはいえ、競争業者のバリューチェーンはみな違う場合が多く、競争業者間のバリューチェーンの違いこそ、競争優位の決め手になるとしている。また、バリューチェーンの基本形から出発して、個々の活動に細分化*していくことは、競争優位の診断において、コスト優位のための要因(コスト・ドライバー)、差別化できる要因を特定できる。
(ポーター, 1985,邦訳, p49,p58-60)

*細分化:例えば、販売・マーケティングを―
マーケティング管理→広告→セールス部隊管理→セールス部隊の動かし方→テクニカル文献→販売促進
に分類するなど。







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 企業は、バリューチェーンを構成する活動のうちのどれか、あるいはいくつかにおいて、企業固有のコンピタンスを身につけなければならないが、上記のバリューチェーン分析によって特定した経営資源やケイパビリティーがどの程度の競争優位になるのか(持続的か一時的か)をVRIOフレームワークによって評価することが可能である。




VRIOフレームワーク
企業ごとに異質な模倣困難な(複製に多額の費用がかかる)リソースに着目するリソース・ベース・ビューにもとづき、企業内部において、競争優位となる経営資源やケイパビリティを特定する際に用いるフレームワークのこと。4つの問いから構成される。
  ①経済価値(value)に関する問い
  ②希少性(rarity)に関する問い
  ③模倣困難性(inimitability)に関する問い
  ④組織に関する問い(organization)

バリューチェーン分析によって特定した経営資源やケイパビリティがどの程度の競争優位になるのか(持続的、一時的)を評価することが可能であることから、分析対象は事業からさらに落とし込んだ資源の分析が好ましい。

以下に4つの問いの詳細を示す。
  1. 経済価値に関する問い
    「その企業の保有する経営資源やケイパビリティーは,その企業が外部環境における脅威や機会に適応することを可能にするか。」
    例:ソニーや3Mの独自の技術的スキルや創造を誘発する組織文化
  2. 希少性に関する問い
    「その経営資源を現在コントロールしているのは、ごく少数の企業だろうか。」
    希少であれば、少なくとも一時的な競争優位に立つことはできるが、希少でなくても、価値があるものは、競争均衡をつくりだし、企業の生存を保障する。
  3. 模倣困難性に関する問い
    「その経営資源を保有していない企業は,その経営資源を獲得あるいは開発する際にコスト上の不利に直面するだろうか」
    模倣の形態は①直接的複製、②代替による模倣がある。この模倣コストが競争企業にとって不利をこうむる場合は、持続的な競争優位となる。

    模倣するコスト上の不利をもたらす要因
    • 1)独自の歴史的条件:経営資源を獲得するために、過ぎ去った過去を再生しなければならない。
      2)因果関係不明性
      ○企業の内部者にとって、当たり前でわからない(組織文化や人間関係など)。
      ○優位性に複数の要因が絡んで、正確な評価が難しい。
      資産ストックの相互関連・資産集合の効率性(ディリックス&クール:何千という組織属性が一体となって競争優位を形成するという属性)
      ○無数の小さな意思決定をうまく行う能力に依存している(外部からは目にすることができない)。
      3)社会的複雑性:企業内におけるマネジャーの相互コミュニケーション能力、組織文化、サプライヤーや顧客の間での自社の評判など物理的技術の複雑性と比べると、社会的に複雑であること。
      4)特許
  4. 組織に関する問い
    「企業が保有する、価値があり希少で模倣コストの大きい経営資源を活用するために、組織的な方針や手続きが整っているだろうか。」(これまでみてきた“VRI”を活かせるか?)
    公式の命令・報告系統,マネジメント・コントロールシステム・報酬体系などで、それ単独で競争優位を生み出す力は限られているため、補完的な経営資源およびケイパビリティーと呼ばれる。

VRIOフレームワークの例として、バーニー, 2003邦訳, p272 表5-2を引用する。

その経営資源やケイパビリティは―

価値が
あるか
希少か 模倣コストは
大きいか
組織体制は
適切か
競争優位の
意味合い
経済的な
パフォーマンス
強みか弱みか
No No 競争劣位 標準を下回る 弱み
Yes No 競争均衡 標準 強み
Yes Yes No 一時的競争優位 標準を上回る 強みであり固有のコンピタンス
Yes Yes Yes Yes 持続的競争優位 標準を上回る 強みであり持続可能な固有のコンピタンス






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<参考文献>
○ジェイ・B・バーニー, 岡田正大訳, 『企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続』, ダイヤモンド社 ,2003邦訳, 第5章 企業の強みと弱み:リソース・ベースド・ビューより。
○M.E.ポーター, 土岐坤訳,『競争優位の戦略―いかに高業績を持続させるか』, ダイヤモンド社, 1985邦訳






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